働き方の多様化とデジタル化が急速に進む現代において、企業が直面する課題の一つが「SNSハラスメント」(ソーシャルハラスメント)です。従来のパワハラやセクハラと異なり、SNSという新しいプラットフォームを通じて発生するこの問題は、企業にとって見えにくく、対策が困難な新たなリスクとなっています。
本記事では、SNSハラスメントの基本的な定義から具体的な事例、そして企業が取り組むべき対策まで、包括的に解説していきます。
SNSハラスメントとは何か

SNSハラスメント(ソーシャルハラスメント)とは、「LINE」、「X」、「Facebook」、「Instagram」などのソーシャルメディアに関する嫌がらせのことを指し、「ソーシャル・メディア・ハラスメント」、「SNSハラスメント」、「ソーハラ」と呼ばれることもあります。
SNSの普及によって増加する、現代特有の新たなハラスメント(嫌がらせ)ですが、その影響は従来のハラスメントと比べても深刻です。SNSはプライベートの重要なツールになりつつあります。SNSの重要性が上がる分だけ、ソーハラの精神的ダメージは非常に大きいものとなります。
SNSハラスメントが注目される背景
SNSを使ったカスタマーハラスメントが目立つ背景として挙げられるのは、SNS人口の増加です。ICT総研によると、2021年には8,149万人がSNSを利用しているというデータがあり、2024年には8,388万人に達すると試算されています。
(参考:ICT総研「2022年度SNS利用動向に関する調査」)
このようなSNS利用者の増加により、職場の人間関係がプライベートなSNSの世界にまで拡大するケースが急増しており、これまでとは全く異なる形でハラスメントが発生する環境が生まれています。
SNSハラスメントの具体的な種類と事例

1. 強制的な繋がりの要求
Facebook・Instagram・X(旧Twitter)といったSNSには、フォローや友達登録をしてアカウント同士を繋げることができます。このとき、部下は望んでいないにも関わらず、上司のほうから繋がろうとしつこく言い寄ることはSNSハラスメントにあたります。
力関係で優位にある者が他者に対してSNSを行う上で、ストレスを感じるような要求を行った場合、ソーシャルハラスメントとなる可能性があります。特に上司と部下の関係において、断りにくい状況で友達申請やフォローを強要されるケースが多く報告されています。
2. 過度な反応の強制
SNSの投稿に対して、いいねやコメントを強要する行為も問題となります。1つ1つの投稿に対して「いいね」を押すように促したり、コメントをしてほしいと強要することもSNSハラスメントにあたります。
3. プライベート干渉
週末に旅行に行った写真をSNSにアップすると、職場の上司から「旅行は楽しかった?」などと話しかけられたりするというリスクがあり、これも職場におけるSNSハラスメントの一形態です。本来であればプライベートな時間の過ごし方について、職場の人間関係を通じて監視や干渉を受けることになります。
4. 勤務時間外の業務連絡
特に、SNSハラスメントの中の「休みの日に仕事のLINE」「フォトハラ」は誰でも加害者・被害者になる可能性があり、注意が必要です。休日や深夜に業務に関するLINEやメッセージを送ることで、相手のプライベート時間を侵害する行為です。
5. フォトハラスメント
フォトハラとは、「フォトハラスメント」の略称で、写真を使った嫌がらせのことを指します。典型的な例としては、自分が写った写真を勝手にフェイスブックにあげられてしまうといったことが上げられます。
フォトハラが起こると「肖像権」や「プライバシー権」が侵害されます。これは法的な問題にも発展しかねない深刻なハラスメントです。
SNSハラスメントが企業に与える影響

従業員への影響
ハラスメントを感じた経験のある233人に被害による影響について聞くと、「精神的に負の感情を持つようになった」が51.9%で最多回答になり、次いで「精神的ダメージにより不安定になった」が33.9%、「心身ともに体調を崩した」が27.5%で上位3つの回答でした。
SNSハラスメントも同様に、従業員の心理的安全性を脅かし、職場環境の悪化につながる重大な問題です。
(参考:Job総研による『2023年 ハラスメント実態調査』を実施 被害7割が”上司”のパワハラ 企業の防止対策不十分の声顕著)
企業リスクの拡大
SNSハラスメントは従来のハラスメントと異なり、証拠が残りやすく、拡散リスクも高いという特徴があります。近年、インターネットを通じたソーシャルメディアは目覚ましい勢いで発展しています。中でも特に拡散性と匿名性の高いSNSは、世界中の不特定多数とつながることができる便利な機能ですが、同時にリスクも高まります。
若い世代ほどSNSに告発する可能性が高いという調査結果も出ており、企業は新しい形のリスク管理を求められています。
企業が取り組むべき対策

1. 明確なガイドライン策定
企業はまず、SNSの使用に関する明確なガイドラインを策定する必要があります。業務時間外のSNS利用、職場の人間関係とSNSの関わり方、写真撮影・投稿のルールなどを具体的に定めることが重要です。
2. デジタルリテラシー教育の実施
これらの新しい形のハラスメントに対しては、従来の対策に加えて、デジタルリテラシーやリモートワークのエチケットに関する教育も必要になってきています。
従業員一人ひとりが、デジタル環境での適切なコミュニケーション方法を理解し、実践できるような教育プログラムの整備が欠かせません。
3. 相談窓口の設置と運用
「相談窓口の設置と周知」の割合が最も高く、約7割以上の企業が実施しているというデータがありますが、SNSハラスメントに対応できる専門知識を持った相談窓口の設置が必要です。
4. 管理職への教育強化
ハラスメントの加害者について聞くと、「上司」が72.5%で最多回答になりというデータが示すように、管理職がハラスメントの加害者になるケースが多いため、特に管理職に対するSNSハラスメント防止教育が重要です。
(参考:Job総研による『2023年 ハラスメント実態調査』を実施 被害7割が”上司”のパワハラ 企業の防止対策不十分の声顕著)
デジタル時代に求められる新しいマネジメント

コミュニケーション境界の明確化
デジタル時代のマネジメントでは、業務とプライベートの境界を明確にし、それを尊重するコミュニケーション文化の構築が不可欠です。上司と部下の関係であっても、プライベートなSNSへの関与は慎重に行う必要があります。
ハイブリッドワークへの対応
リモートワークやハイブリッドワークが普及する中で、オンラインでのコミュニケーションエチケットの確立が重要になっています。業務時間外のメッセージ送信、オンライン会議での振る舞い、デジタルツールを使った情報共有の方法など、新しい働き方に対応したルール作りが求められます。
法的観点から見るSNSハラスメント
全てのハラスメントは、民法の「不法行為」になり得るという認識を持つことが重要です。SNSハラスメントも例外ではなく、被害者が精神的苦痛を受けた場合、法的責任を問われる可能性があります。
被害者と同僚のSNS(LINE)のやり取りを証拠として、セクハラ行為の存在を認定した点が注目されますという判例もあり、SNSでのやり取りが法的な証拠として採用される現実があります。
今後の展望と企業が準備すべきこと

継続的な教育体制の構築
デジタル技術の進歩は非常に速く、新しいSNSプラットフォームや機能が次々と登場します。企業は継続的にデジタルリテラシー教育を更新し、最新のSNSハラスメントリスクに対応できる体制を構築する必要があります。
多様な世代への配慮
職場には様々な世代が共存しており、SNSに対する理解や使用頻度も大きく異なります。世代間のギャップを埋めながら、全ての従業員が快適に働ける環境を整備することが重要です。
予防重視の文化づくり
事後対応よりも予防を重視し、SNSハラスメントが起きにくい企業文化の醸成に取り組むことが長期的には最も効果的です。互いを尊重し、適切なデジタルコミュニケーションを実践する職場環境を作り上げることが求められます。
さいごに

SNSハラスメントは、デジタル化が進む現代の職場で避けて通れない重要な課題です。従来のハラスメントとは異なる特徴を持つこの問題に対して、企業は新しいアプローチで取り組む必要があります。
明確なガイドライン策定、デジタルリテラシー教育の実施、適切な相談窓口の設置、そして管理職への教育強化を通じて、全ての従業員が安心してデジタルコミュニケーションを活用できる職場環境を構築することが重要です。
デジタル時代の新しいリスクマネジメントとして、SNSハラスメント対策に今すぐ取り組み、健全で生産性の高い職場づくりを進めていきましょう。
BasisPoint Academyでは、SNSハラスメントを含むデジタル時代のハラスメント防止に特化した研修プログラムをご用意しています。リモートワーク環境における効果的なコミュニケーション方法や、管理職向けのデジタルマネジメント手法など、御社の状況に合わせたカスタマイズも可能です。 ぜひお気軽にご相談ください。





