毎朝の挨拶をしても無視をされる、舌打ちやため息を大きくつかれる、話しかけても不機嫌な態度で返される—そんな経験はありませんか。実はこれらの行為は「不機嫌ハラスメント(フキハラ)」と呼ばれる、新たなハラスメントの一種です。
厚生労働省の「令和5年度職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、過去3年間でパワハラを受けた労働者は19.3%に上り、職場でのハラスメントは依然として深刻な問題となっています。
(参考:厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査」)
不機嫌ハラスメントは、直接的な暴言や暴力を伴わないため見過ごされがちですが、職場の雰囲気を悪化させ、従業員のメンタルヘルスに深刻な影響を与えることがあります。この記事では、不機嫌ハラスメントの実態と対処法について詳しく解説します。
不機嫌ハラスメント(フキハラ)とは?

不機嫌ハラスメント(略称:フキハラ)とは、不機嫌な態度や口調で相手に威圧感や不快感を与える行為のことです。モラルハラスメントの一種とされ、本人が意図的に行う場合と無意識に行っている場合の両方があります。
フキハラの具体例
職場で見られる典型的なフキハラには以下のような行為があります。
無言での威圧
- 挨拶をしても無視したり、返事をしない
- 報告や相談をしても、不機嫌な表情でうなずくだけ
- 必要最小限の会話しか行わない
感情的な行動
- わざとため息や舌打ちをする
- 機嫌が悪いことを態度で示す
- ドアを強く閉めたり、物を乱暴に置いたりする
特定の人への態度の変化
- 他の人には普通に接するが、特定の人にだけ不機嫌な態度を取る
- 同じ質問でも、相手によって明らかに態度を変える
- 立場の弱い人を狙って不機嫌さをぶつける
フキハラを繰り返す人の心理とは?

不機嫌ハラスメントを行う人の心理には、いくつかの共通したパターンがあります。
1. 承認欲求の現れ
多くのフキハラ行為者は、周囲から「気にかけてもらいたい」「心配してもらいたい」という承認欲求を持っています。不機嫌な態度を取ることで、周囲の人が自分に気を遣ってくれることに、一種の安心感や優越感を覚えてしまうのです。
本来であれば言葉で伝えるべき不満や要望を、感情の表出という形で表現しているケースが多く見られます。
2. ストレスや体調不良の影響
慢性的なストレス、過労、睡眠不足、体調不良などが原因で、感情をコントロールする余裕を失っている場合があります。これらの要因により、本人の意図とは関係なく不機嫌な態度が表に出てしまうことがあります。
3. 承認欲求の不満足
「がんばっているのに評価されない」「他人ばかりが認められる」といった不満が蓄積され、感情的な反発として不機嫌さに変化することがあります。正当な評価を受けていないという感覚が、周囲への攻撃的な態度として現れるのです。
4. 相手との関係性の利用
フキハラを行う人は、しばしば「関係が変わらない相手」を狙って不機嫌さを表に出します。職場では立場の弱い部下、家庭では家族など、自分に対して離れていかない、または離れることができない相手を対象にすることが多いのです。
フキハラが職場に与える影響

不機嫌ハラスメントは、単に一個人の問題として片付けることはできません。職場全体に深刻な影響を与える可能性があります。
心理的安全性の破綻
フキハラが常態化した職場では、従業員が「今日は機嫌が悪そうだから話しかけるのをやめよう」「何か言ったら不機嫌になられるかもしれない」と常に相手の顔色を伺うようになります。これにより、自由な発言や相談ができない雰囲気が生まれ、職場の心理的安全性が損なわれます。
生産性の低下
従業員が相手の機嫌を気にしながら業務を行うことで、本来の業務に集中できなくなります。また、必要なコミュニケーションが取れないことで、ミスや業務の停滞が発生しやすくなります。
不機嫌の伝播
人間の脳はネガティブな感情を受け取りやすい特性があります。一人の不機嫌が職場全体に伝播し、新たなフキハラを生む悪循環に陥る危険性があります。
効果的な対処法
では、フキハラに遭遇した場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
個人でできる対処法
1. 心理的・物理的な距離を置く
可能な限り、フキハラを行う人との心理的・物理的な距離を置くことが重要です。プライベートな会話を避け、業務上必要な連絡のみに留めることで、相手の不機嫌に巻き込まれるリスクを軽減できます。
2. 冷静な対応を心がける
相手の不機嫌に反応せず、常にポジティブで冷静な態度を維持することが大切です。笑顔で挨拶をする、丁寧な対応を心がけるなど、自分のペースを保つことで精神的な負担を軽減できます。
3. 過度な機嫌取りはしない
不機嫌な相手の機嫌を取ろうとする行為は、逆効果になる場合があります。相手の承認欲求を満たしてしまうことで、フキハラ行為がエスカレートする可能性があります。
4. 記録を残す
フキハラの具体的な内容や日時を記録しておくことで、後に会社に相談する際の客観的な証拠として活用できます。
組織としての対応
1. 相談窓口への報告
フキハラが業務に支障をきたしている場合は、人事部門や相談窓口に報告することを検討しましょう。相談時は、感情的にならず、具体的な事実と業務への影響を客観的に伝えることが重要です。
2. 適切な指導や配置転換の検討
組織としては、フキハラ行為者への指導や、必要に応じて配置転換を検討することが求められます。問題が深刻な場合は、専門的なカウンセリングの受診を促すことも有効です。
フキハラの予防策

個人レベルでの予防
感情の言語化を心がける
不満やストレスを態度で表現するのではなく、言葉で伝える習慣をつけることが重要です。「今、〇〇の件でストレスを感じています」「△△の点で困っています」など、具体的に表現することで、周囲の理解とサポートを得やすくなります。
ストレス管理の徹底
定期的な休息、適度な運動、趣味の時間の確保など、ストレスを適切に管理することで、感情のコントロール能力を維持できます。
組織レベルでの予防
研修の実施
ハラスメント防止研修において、フキハラについても取り上げ、従業員の意識向上を図ることが効果的です。特に、無意識に行っている可能性があることを周知することが重要です。
相談しやすい環境づくり
定期的な面談の実施、匿名の相談窓口の設置など、従業員が気軽に相談できる環境を整備することで、問題の早期発見・解決につながります。
評価制度の透明性向上
不公平感からくるフキハラを防ぐため、評価制度の透明性を高め、従業員が納得できる評価とフィードバックを行うことが重要です。
あなた自身をチェックしてみよう

以下のチェックリストで、自分自身がフキハラを行っていないか確認してみましょう。
フキハラ加害者チェックリスト
- 思い通りにならないと不機嫌になることがある
- 不満があるとき、つい態度に出してしまう
- 挨拶を返さないことがある
- ため息や舌打ちをよくする
- 特定の人にだけ冷たい態度を取ることがある
フキハラ被害者チェックリスト
- 相手の顔色を常に気にしている
- 話しかけるタイミングを過度に気にする
- 相手の機嫌に自分の気分が左右される
- 職場で緊張状態が続いている
- 特定の人との関わりを避けたいと感じている
これらの項目に当てはまる場合は、適切な対処や予防策を講じることが重要です。
さいごに

不機嫌ハラスメントは、一見軽視されがちですが、職場の雰囲気や従業員のメンタルヘルスに深刻な影響を与える問題です。パワハラ防止法の施行により、企業にはハラスメント防止措置が義務付けられていますが、フキハラのような「見えにくいハラスメント」についても、同様の対策が求められています。
個人としては相手の不機嫌に振り回されることなく冷静に対処し、組織としては予防と早期対応の仕組みを整備することが重要です。健全な職場環境を維持するために、一人ひとりが意識を持って取り組んでいくことが必要です。
もしあなたの職場でフキハラに悩んでいる場合は、一人で抱え込まず、適切な相談窓口や専門機関に相談することをお勧めします。
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