ビジネスで差がつく「傾聴力」とは?信頼関係を築く聴き方のコツ

「話をちゃんと聞いているのに、なぜか相手との関係がうまくいかない」
「部下や取引先の本音を引き出せない」
——そんな悩みを抱えているビジネスパーソンは少なくありません。

実は、ただ話を「聞く」だけでは不十分なのです。大切なのは、相手の心に寄り添って「聴く」こと。それが「傾聴力」です。

近年、多くの企業が研修プログラムで傾聴力を重視しています。HR総研の調査によると、コミュニケーション研修やコーチング研修において「傾聴力(聴く力)」を扱っている企業は72%にのぼります。(出典:HR総研「人事白書2016」
この数字が示すように、傾聴力は現代のビジネスシーンで欠かせないスキルとなっているのです。

本記事では、傾聴力の本質から具体的な実践方法まで、ビジネスで成果を出すための「聴く技術」を解説します。

傾聴力とは何か

傾聴力とは、単に相手の話を耳で聞くのではなく、相手の言葉の背景にある感情や考え、意図までを理解しようとする能力です。

アメリカの臨床心理学者カール・ロジャーズによって提唱されたこの概念は、もともと心理カウンセリングの技法として発展しましたが、現在ではビジネスコミュニケーションにおいても重要なスキルとして認識されています。

経済産業省が2006年に提唱した「社会人基礎力」においても、傾聴力は「チームで働く力」を構成する12の能力要素の一つに位置づけられています。
(出典:経済産業省「社会人基礎力」

つまり、傾聴力は職場や社会で活躍し続けるために必要不可欠な基礎的能力なのです。

日本語の「きく」には、「聞く」「聴く」「訊く」という3つの漢字があります。「聞く」は自然と耳に入ってくる音を指し、「訊く」は質問して情報を得ることを意味します。一方、「聴く」は、相手の話に意識を集中させ、理解しようと努める行為を表します。

傾聴力の「聴」という字は、「耳」に「十四の心」を持って聴くと書きます。この文字が示すように、傾聴とは心を傾けて相手と向き合うコミュニケーションなのです。

なぜビジネスで傾聴力が求められるのか

信頼関係の構築につながる

ビジネスの現場では、社内外を問わず信頼関係の構築が不可欠です。パーソル総合研究所が実施した「職場での対話に関する定量調査」では、本音で話せる相手の特徴として「傾聴的態度」が高い評価を得ることが明らかになっています。(出典:パーソル総合研究所「職場での対話に関する定量調査」)

相手が「この人には安心して話せる」「自分のことを理解してくれている」と感じたとき、初めて本音を打ち明けることができます。傾聴を通じて相手の話に真摯に耳を傾けることで、相手は尊重されていると感じ、心を開いてくれるのです。営業やコンサルティングの場面では、顧客の本当のニーズや課題を引き出すことができ、より的確な提案につながります。

心理的安全性を高める

Googleが実施したプロジェクト・アリストテレスの研究では、成功するチームに共通する最も重要な要素として「心理的安全性」が挙げられました。心理的安全性とは、チームメンバーが気兼ねなく発言でき、リスクを取っても大丈夫だと感じられる環境を指します(出典:Google re:Work 「効果的な​チームとは​何か」を​知る

管理職やリーダーが傾聴力を発揮することで、部下やメンバーは「自分の意見が尊重される」と感じ、積極的に意見を述べるようになります。失敗やミス、困っていることなども報告しやすくなり、組織全体のパフォーマンス向上につながるのです。

ミスコミュニケーションやハラスメントの防止

傾聴の基本姿勢は、相手の発言を否定せず、まず受け止めることにあります。決めつけや誤解によるミスコミュニケーションを防ぎ、ハラスメントのリスクも低減できます。

相手の言葉の真意を理解しようと努めることで、不要な対立や行き違いを避けることができるのです。

自分自身の視野も広がる

傾聴力は相手のためだけではありません。多様な考え方や価値観に耳を傾けることで、自分では思いつかなかった視点や発想に触れることができます。

これにより、自身の思考の幅が広がり、より多角的な判断ができるようになるでしょう。

傾聴力を高める5つの方法

それでは、具体的にどのようにすれば傾聴力を高めることができるのでしょうか。ここでは、すぐに実践できる5つの方法をご紹介します。

1. 話しやすい環境を整える

傾聴の第一歩は、相手が安心して話せる環境をつくることです。可能であれば、周囲の目や耳を気にせず話せる個室や静かな場所を選びましょう。

対面が難しい場合でも、オンライン会議で背景を調整したり、電話であれば雑音の少ない場所を選ぶなどの配慮が大切です。

また、時間にも余裕を持つことが重要です。「5分だけ」と急かされる状況では、相手は本音を語れません。十分な時間を確保し、「あなたの話をしっかり聞く準備ができている」というメッセージを伝えましょう。

2. 相手のペースに合わせて聴く

傾聴の基本は、聞き手ではなく話し手が主役であることを忘れないことです。相手が言葉を選びながらゆっくり話すタイプなら、焦らせずにそのペースを尊重します。逆に、感情的になって早口で話す場合も、まずは落ち着くまで遮らずに聴きましょう。

このとき、姿勢や視線、表情も重要です。相手の方に体を向け、適度にアイコンタクトを取り、うなずきや相槌を入れることで、「あなたの話に関心を持っている」という姿勢を示します。メモを取ることも、真剣に聴いていることを伝える効果的な方法です。

3. 受け止めてから質問する

傾聴で陥りがちな失敗が、相手の話を遮って質問をしてしまうことです。例えば、「週末に映画を観に行ったんです」と言われたとき、すぐに「何の映画ですか?」「どこで観たんですか?」と質問攻めにしてはいけません。

まずは「週末に映画を観に行かれたんですね」と相手の言葉を受け止めましょう。この「受け止め」のステップを経ることで、相手は「自分の話を聴いてくれている」と感じ、より詳しく話してくれるようになります。質問はその後で構いません。

4. 要約や言い換えで理解を確認する

相手の話がひと段落したら、「つまり、○○ということですね」「重要なポイントは○○という部分でしょうか」と、自分の言葉で要約したり言い換えたりしてみましょう。これにより、話し手は自分の話が正確に伝わったかを確認でき、認識のズレがあればその場で修正できます。

また、要約や言い換えは、話し手に「この人は自分の話を理解しようと真剣に聴いてくれている」という印象を与える効果もあります。

5. 共感を示す

傾聴において最も大切なのは、相手の感情に共感を示すことです。「それは大変でしたね」「嬉しかったでしょうね」といった言葉で、相手の気持ちに寄り添いましょう。ただし、「わかります」という言葉は安易に使わないよう注意が必要です。本当に相手の立場や状況を理解していない場合、かえって不信感を招くことがあります。

共感は言葉だけでなく、表情や声のトーンでも伝えることができます。相手が嬉しそうに話しているときは明るい表情で、悩みを打ち明けているときは真剣な表情で聴くなど、場面に応じた反応を心がけましょう。

傾聴力を損なうNG行動

傾聴力を発揮しようとしても、以下のような行動を取ってしまうと逆効果になります。注意すべきNG行動をチェックしておきましょう。

話を途中で遮る

相手が話している最中に割り込んだり、話題を変えたりするのは厳禁です。特に、相手がまだ本題に入っていない段階で遮ってしまうと、重要な情報を聞き逃すことになります。

たとえ自分の中で疑問が浮かんでも、まずは相手が一通り話し終えるまで待ちましょう。

相手の考えや価値観を否定する

「それは間違っています」「そんなことを考えるのはおかしい」といった否定的な言葉は、相手の心を閉ざしてしまいます。たとえ自分と異なる意見であっても、まずは相手の立場や背景を理解しようと努める姿勢が大切です。

否定的な態度は、言葉だけでなく表情や態度にも表れるので注意が必要です。

自分の意見を押し付ける

「私の経験では○○だから、あなたもそうすべきだ」というように、自分の価値観や経験を押し付けることも避けましょう。傾聴の目的は、相手を理解し、相手自身が答えを見つけられるようサポートすることです。

アドバイスをする場合も、「一つの意見として聞いてほしいのですが」といった前置きを入れるなど、押し付けにならない配慮が必要です。

スマートフォンやパソコンを見ながら聴く

ながら聴きは、相手に「自分の話は重要視されていない」という印象を与えてしまいます。たとえ実際には話の内容を理解していても、視線がスマートフォンや画面に向いていれば、相手は軽んじられていると感じるでしょう。

傾聴する際は、デバイスを脇に置き、相手に意識を集中させることが重要です。

さいごに

傾聴力は、一朝一夕に身につくスキルではありません。しかし、日々のコミュニケーションの中で意識的に実践することで、確実に向上させることができます。相手のペースに合わせて聴く、まず受け止めてから質問する、共感を示すといった基本を心がけるだけでも、相手との関係性は大きく変わってくるはずです。

ビジネスの成功は、人と人との信頼関係の上に成り立っています。傾聴力を磨くことは、目の前の相手との関係を深めるだけでなく、あなた自身のキャリアの可能性を広げることにもつながるのです。

まずは明日の会議や商談、1on1ミーティングで、今日ご紹介した傾聴のポイントを一つでも実践してみてください。相手の反応の変化に、きっと驚かれることでしょう。

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