OKRとは?Google・メルカリも導入する目標管理手法を詳しく解説

OKRの基本的な意味と概念

OKRとは「Objectives and Key Results」の略称で、「目標と主要な結果」を意味する目標管理のフレームワークです。すべての社員が同じ方向を向き、明確な優先順位を持ちつつ、一定のペースで計画を進行することを目的としています。

OKRは、「目標(O)」「主要な結果(KR)」のふたつを設定し、目標管理を行います。

会社のOKR、部門やチームのOKR、個人のOKR……というように、組織階層ごとに相関関係のあるOKRをそれぞれ設定します。

このフレームワークを活用することで、企業全体から個人まで一貫した目標設定が可能となり、組織の方向性を統一できるのが大きな特徴です。

OKRの歴史と発展

OKRは、米インテル社で誕生した目標管理のフレームです。OKRの概念は、1970年代にインテルの元CEOであるアンディ・グローブによって考案されました。その後、ジョン・ドーアによってシリコンバレーに広まり、GoogleやLinkedInなどの大手テック企業で採用されるようになりました。

日本においても、フリマアプリで知られるメルカリが2015年よりOKRを導入し、その後多くの企業で注目を集めるようになりました。

従来はピーター・ドラッカーが提唱したMBOという目標管理制度が主流でしたが、OKRは組織と個人の目標が連動しており、生産性やモチベーションの向上に結びつきやすいことから注目を集めるようになりました。

OKRの構成要素と設定方法

Objectives(目標)の設定

OKRの「目標」は、挑戦的でありながら一貫性のある目標を設定します。

目標は定性的な内容で構いませんが、チーム全体がワクワクできるような魅力的な内容であることが重要です。

一つの達成目標(Objectives)に対して集中することで、組織のリソースを効率的に活用できます。

Key Results(主要な結果)の設定

KR(Key Results)は、達成目標(Objectives)を達成するために進捗させたい定量的・客観的な成果として設定します。

KRはひとつのOに対して3〜5個に絞ることが推奨されています。それ以上になると達成するための要素が多すぎてしまい、リソースが分散して質の低下や進捗の遅れを招きます。

Key Resultsは必ず数値で測定可能な内容とし、進捗状況を客観的に判断できるものにする必要があります。

この明確な指標があることで、目標達成度を正確に把握し、必要に応じて戦略を調整することが可能になります。

OKRの特徴的な運用ルール

ストレッチゴールの設定

例えば、OKRを採用している企業として知られているGoogleでは、達成度が60~70%のOKRを立てることがよいとされているそうです。OKRはモチベーションアップのために進捗率60〜70%で成功と言えるような高い目標を設定します。

この「ストレッチゴール」の考え方は、従来の目標管理手法との大きな違いです。

100%達成できる目標ではなく、努力と挑戦を要する高い目標を設定することで、チームの成長とイノベーションを促進します。

短期サイクルでの運用

「目標の設定→マイルストーンの設定→達成度の評価→再設定」のサイクルを早く回し、市場のニーズの変化に対応しやすいところも、注目を集めている理由といえるでしょう。

多くの企業では四半期(3ヶ月)ごとにOKRを見直し、変化の激しいビジネス環境に柔軟に対応しています。

透明性の重視

OKRでは、透明性が重要になります。

すべての目標から進捗状況、結果までを公開し、経営陣や社員など社内の誰もがアクセスして見られる状態にしておきましょう。

この透明性により、部署間の連携が促進され、組織全体でのシナジー効果が生まれます。

他の目標管理手法との違い

OKRとKPIの違い

KPIとは「重要業績評価指標(Key Performance Indicator)」の略称で、目標達成やビジネス戦略の実現に向けた業務プロセスが適切に実施されているかを測る定量的な指標のことです。

OKRとの違いは、OKRでは目標に対する達成率は60~70%が理想であることに対し、KPIでは達成率100%を目指します。

また、OKRは1〜3ヶ月単位で目標設定を見直すのに対し、KPIは業務のプロジェクトごとに変動するという違いもあります。

KPIが業務プロセスの管理に重点を置くのに対し、OKRはより戦略的な目標達成にフォーカスしています。

OKRとMBOの違い

MBOと異なり、OKRは原則として人事評価と結びつけることはしません。

もし、OKRの評価を人事評価と結びつけてしまうと、達成しやすいレベルの目標設定となる傾向があり、OKR本来の目的を実現できない可能性が高くなります。

MBOでは、OKRとは異なり厳しすぎる目標設定はせず、「頑張れば100%クリアできる基準」で定めます。

なぜなら、MBOは人事評価制が強く、目標の達成と報酬が関わるためです。一方でOKRは、組織が成長することが目的であり6割から7割ほどの達成度合いが見込める目標を立てます。

OKR導入によるメリット

組織の方向性統一

OKRでは、まず自社の目標を設定して、その目標に対して各部署、各課、社員一人ひとりの目標や具体的なアクションに落とし込みます。

自社の目標が社員の業務とリンクするので、自社の目標を社員全員が共有できるようになります。

この仕組みにより、個人の業務が企業全体の成功にどのように貢献しているかが明確になり、社員のエンゲージメント向上につながります。

コミュニケーションの活性化

OKRは、自社が目指す目標を全社員と共有してモチベーションアップをはかります。

全社員が目標を把握し、目標に対する達成度を1か月~3か月程度の短期サイクルで評価し、その都度目標を確認するため、社員が自社の目標や課題を把握しやすくなります。

前述したようにOKRは、人事評価には反映されません。また、60%程度の達成率でも十分なので、評価のミーティングをする時も、気軽にかつ前向きな気持ちで行うことができます。

さらに、同じ目標に向かってそれぞれの部門や個人がどう取り組むのかをテーマとする、部門間のコミュニケーションも促進されるでしょう。

生産性とモチベーションの向上

OKRでは、自社の目標達成に向けて、社員一人ひとりが取り組むべき業務が明確となり、貢献度合いが実感しやすいと言われています。

自分の仕事が自社の目標達成に貢献しているとわかれば、社員のモチベーションが向上するでしょう。

また、重要なことに集中することで、優先順位が明確になり、無駄な業務を削減して生産性を向上させる効果も期待できます。

実際の企業導入事例

Googleの事例

Googleは、四半期ごとに全社的なミーティングを実施し、OKRの公開と評価を行っています。

また、OKRをチームで統一するのではなく、個人の信念や価値観に基づいて定めているため、OKRを問うだけでもその人が大切にしていることがわかります。

そのため、定期的に上司と部下が1対1で話をする「1on1」の機会を設け、上司は部下のOKRを把握するようにしています。

1対1の対話にはコストがかかりますが、1対1の対話をすることで、戦略や目標に対して、従業員ひとりひとりからの理解と納得が得られ、なおかつ企業が各従業員の考えや現状を把握することにつながっています。

メルカリの事例

フリマアプリで知られるメルカリは、OKRとMBOを併用して成果を評価しています。

OKRは、3ヶ月に1度データを基に見直しを行い、従業員との面談を行って、さらに、半年に1度各チームのOKRを共有し、理解を深めるために合宿を実施しています。

全社的なOKRについても、経営陣のみで決めるのではなく、従業員が参加する合宿で議論し、決定しています。

メルカリは「Go Bold(大胆にやろう)」「All for One(全ては成功のために)」「Be a Pro(プロフェッショナルであれ)」という3つのバリューのうち、「All for One」を実現する手段としてOKRを活用。全社への貢献やインパクトを重視するため、会社や事業の成功を目指す「OKR」と、全社共通の価値観である「Value」の2つの軸で「All for One」の達成状況を確認しています。

OKR導入時の注意点と失敗要因

よくある失敗パターン

多くの企業がOKR導入に失敗するのには見事なまでに共通項があります。まずOKRというカッコイイ言葉が導入すれば後はうまくいく銀の弾丸のような印象を与えるからです。

残念ながらOKRは導入しただけでは絶対にうまくいきません。大切なのはOKRそのものよりもOKRを導入する企業のビジョンや思想、そこに基づく全社を挙げたコミットメントといった「運用が命」です。

日本企業ではOKRを導入しても継続できないケースが少なくありません。その理由として、3つのポイントが挙げられます。

1つめの理由は「経営思想とカルチャーが違う」ことです。OKRには「管理主義的なMBOに対するアンチテーゼ」の側面があることは、先に述べたとおりです。

にもかかわらず、これまでMBOを導入していた企業が「OKR=MBOの最新版・進化版」の認識で変更すれば、混乱が起きます。MBOとOKRは経営思想が異なるためです。

日本企業特有の課題

自由でチャレンジングなシリコンバレーのハイテク企業とはカルチャーが違う、という問題もあります。日本企業では「目標必達」の精神が浸透している企業も少なくありません。

目標必達カルチャーを持つ企業が、突然「達成率60〜70%のムーンショットを掲げる」といわれても、うまくいかないのは当然です。

日本企業特有の社内文化で年功序列があります。

これは海外の実力主義の逆で、下が上に意見をできないようなクローズドな職場を形成してしまいます。

従業員は本音を伝えられないと業務に対してのモチベーションやエンゲージメントが上がらず、支障をきたしてしまうのです。

OKRにとって、コミュニケーションは要です。コミュニケーションがあまりない企業では、OKRはうまくはいきません。

OKR成功のためのポイント

経営陣のコミットメント

そもそもOKRを設定するときに絶対に四半期は変更しないOKRを設定すべきですし、一度設定したOKRは絶対に四半期は変更しないという覚悟をトップ自らが持つ覚悟がなければ、OKRを用いない方が良いかもしれません。OKRを使うなら四半期は絶対にOやKRを変えないのが基本です。

経営陣が本気でOKRに取り組む姿勢を示すことが、組織全体への浸透において極めて重要です。中途半端な導入では、従来の目標管理手法と変わらない結果に終わってしまいます。

段階的な導入と継続的改善

OKRを導入する前に、まずは社内アンケートや1on1で従業員からの意見を吸い上げ、しっかりとそれらを受け止めましょう。従業員からの信頼なくしてOKRは成功しないでしょう。

また、OKRはマネジメントとコミュニケーションのためのツールです。成果を出すために自社、自チーム流に改善していかなければならないのです。そして、その改善活動こそが、組織、チームの学習を促進し、成長につながります。

適切な目標設定

OKRはシンプルで皆が覚えやすいものを1つ設定するべきです。目標を1つに絞ることで、取り組みの方向性を統一することができ、短期間でも大きな成果を上げることが出来ます。

複数の目標を並行して追うのではなく、最も重要な目標に集中することで、組織のリソースを効率的に活用し、より大きなインパクトを生み出すことができます。

現代のビジネス環境におけるOKRの意義

急激に変化する現代のビジネス環境において、OKRは従来の年次目標管理では対応しきれない課題を解決する有効な手法です。短期サイクルでの目標見直しと透明性の高い運用により、組織の機敏性と一体感を同時に実現できます。

ただし、OKRは単なるツールではなく、組織文化の変革を伴う取り組みです。成功するためには、経営陣のコミットメント、従業員の理解と参加、そして継続的な改善努力が不可欠です。

導入を検討する企業は、自社の文化や現状を十分に分析し、段階的なアプローチで取り組むことが重要といえるでしょう。

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