現代のビジネス環境では、職場におけるハラスメント問題は重要な課題となっています。
ハラスメントは被害者の精神的健康に悪影響を及ぼすだけでなく、組織の生産性や企業文化にも大きなダメージを与えます。
本記事では、職場で発生する可能性のある12種類のハラスメントとその特徴を詳しく解説します。
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セクシュアルハラスメント(セクハラ)
セクシュアルハラスメントは、最も広く認知されているハラスメントの一つです。
性的な言動により、相手に不快感や不利益を与える行為を指します。
具体的な例としては、以下のようなものがあります。
- 性的な冗談やコメント
- 不必要な身体的接触
- 性的な噂を流す
- 食事やデートへの強引な誘い
- 性的な関係を持つことを条件に昇進や評価を約束する行為
重要なのは、行為者の意図よりも、受け手がどう感じるかが基準となる点です。
「冗談のつもり」でも、相手が不快に感じれば立派なセクハラとなります。
パワーハラスメント(パワハラ)
パワーハラスメントは、職場での優位な立場や権力を利用して、精神的・身体的な苦痛を与える行為です。
2020年6月からは、改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)により、企業にパワハラ防止措置が義務付けられています。
パワハラには主に以下のような行為が含まれます。
- 身体的な攻撃(暴力や傷害)
- 精神的な攻撃(脅迫、名誉棄損、侮辱、ひどい暴言)
- 人間関係からの切り離し(隔離、仲間外れ、無視)
- 過大な要求(明らかに達成不可能な目標を課す)
- 過小な要求(能力や経験とかけ離れた簡単な仕事しか与えない)
- 個の侵害(私生活に過度に干渉する)
上司から部下へのハラスメントが典型的ですが、同僚間や部下から上司へのケース(逆パワハラ)も存在します。
モラルハラスメント(モラハラ)
モラルハラスメントは、言葉や態度、文書などによって、継続的に相手の人格や尊厳を傷つけ、精神的に追い詰める行為です。
パワハラと似ていますが、必ずしも職場の権力関係に基づかない点が異なります。
モラハラの特徴的な行動パターンには以下のようなものがあります。
- 陰口や悪口を言う
- 他者の前で批判、非難する
- 人格を否定するような発言をする
- 無視したり、コミュニケーションを拒否したりする
- 相手の言動を常に監視、批判する
モラハラは目に見えにくく、証拠が残りにくいため、被害の立証が難しいケースが多いです。
関連記事:パワハラ・セクハラ・モラハラの違いとは?事例から学ぶハラスメントの境界線
マタニティハラスメント(マタハラ)
マタニティハラスメントは、女性が妊娠・出産・育児を理由に職場で受ける不当な扱いを指します。
男女雇用機会均等法や育児・介護休業法では、これらを理由とした不利益な取り扱いを禁止しています。
マタハラの具体例としては、次のようなものがあります。
- 妊娠を理由に降格や解雇をする
- 「迷惑」「負担」などの不快な言動を行う
- 妊婦健診や産休の取得を嫌がらせる
- 出産後の時短勤務や育休からの復帰を困難にする
- 育児との両立を理由に重要なプロジェクトから外す
働きながら安心して子どもを産み育てる権利を侵害する行為は、企業の社会的責任の観点からも許されません。
パタニティハラスメント(パタハラ)
パタニティハラスメントは、男性の育児参加や育児休業取得を阻害するハラスメントです。
女性のみならず男性も、仕事と育児の両立を支援する環境が重要です。
パタハラには次のような例があります。
- 男性の育休取得に対する嫌がらせや批判
- 「男が育児に参加するのはおかしい」といった固定観念に基づく発言
- 育児のための早退や休暇取得を認めない
- 育休から復帰した男性社員に対する業務上の不利益
- 「育休=キャリア放棄」といった風潮の助長
男性の育児参加を促進することは、女性の活躍推進やワークライフバランスの実現にも繋がります。
ソーシャルメディアハラスメント(SNSハラ)
ソーシャルメディアハラスメントは、SNSなどのプラットフォームを利用した嫌がらせ行為です。
オンラインでの言動も現実同様に重大な影響を持ちます。
SNSハラの代表的な形態としては以下のようなものが挙げられます。
- 職場の同僚や上司について悪意ある投稿をする
- 仕事上の機密情報や個人情報をSNSで公開する
- 職場の出来事を許可なく撮影・投稿する
- 同僚のSNSアカウントをストーキングする
- 職場の人間関係をSNS上で操作する
リモートワークの普及に伴い、SNSハラの事例は増加傾向にあります。
デジタルツールの適切な使用についての教育が重要です。
アルコールハラスメント(アルハラ)
アルコールハラスメントは、飲酒を強要したり、酔いを理由に行われる嫌がらせ行為です。
職場の飲み会や接待の場で特に発生しやすいハラスメントです。
アルハラの具体例としては、次のようなものがあります。
- 飲酒の強要
- 一気飲みの強制
- お酌や席の移動などを無理強いする
- 酒の席での不適切な言動や行為
- 飲み会への参加を事実上強制する
飲酒に関する個人の意思や健康状態、宗教上の理由などは尊重されるべきであり、「コミュニケーションのため」といった理由で強制することは許されません。
レイシャルハラスメント(人種ハラスメント)
レイシャルハラスメントは、人種や国籍、民族などを理由に行われる差別的言動や嫌がらせを指します。
グローバル化が進む現代の職場では特に注意が必要です。
レイシャルハラスメントの例としては以下のようなものがあります。
- 出身国や人種に関する差別的な発言や冗談
- 特定の国や地域の文化や習慣を侮辱する行為
- 名前の発音をわざと間違える
- 不必要に出身や民族を強調する
- 言語能力を理由に不当に評価する
多様性を尊重する職場環境の構築は、企業の国際競争力の観点からも重要な課題です。
エイジハラスメント(年齢ハラスメント)
エイジハラスメントは、年齢を理由とした差別や嫌がらせ行為を指します。
若年層に対するものも高齢層に対するものも含まれます。
エイジハラスメントの具体例としては、次のようなものがあります。
- 「若いくせに」「年寄りだから」といった発言
- 年齢を理由に意見や提案を軽視する
- 若手社員に対する過度な叱責や指導
- 高齢社員の経験や知識を尊重しない
- 年齢を理由に昇進や研修機会を制限する
すべての年代の従業員がそれぞれの強みを活かし、相互に尊重し合える環境づくりが重要です。
SOGIハラスメント(性的指向・性自認ハラスメント)
SOGIハラスメントは、性的指向(Sexual Orientation)や性自認(Gender Identity)に関連した嫌がらせを指します。
LGBTQなど多様なセクシュアリティを持つ人々に対する差別的言動が該当します。
SOGIハラの例としては以下のようなものが挙げられます。
- 性的指向や性自認に関する侮辱的な発言や冗談
- アウティング(本人の同意なく性的指向等を暴露する行為)
- 特定の服装や振る舞いを強制する
- 不必要に性的指向や性自認について質問する
- トランスジェンダーの人の自認する性別を尊重しない言動
多様な性のあり方を尊重する職場環境は、すべての従業員が安心して働くために不可欠です。
テクノロジーハラスメント(テクハラ)
テクノロジーハラスメントは、ITやデジタル技術の習熟度の差を利用した嫌がらせ行為です。
特にデジタル化が急速に進む現代において問題となっています。
テクハラの具体例としては、次のようなものがあります。
- IT知識の乏しい人を公の場で侮辱する
- 必要な技術サポートを意図的に提供しない
- 技術用語を多用して相手を混乱させる
- デジタルスキルの習得に必要な時間や支援を与えない
- オンライン会議の設定を複雑にして特定の人を排除する
デジタル変革の時代には、すべての従業員が必要なITスキルを習得できるよう支援する姿勢が重要です。
カスタマーハラスメント(カスハラ)
カスタマーハラスメントは、顧客や取引先からの従業員に対する嫌がらせ行為を指します。
サービス業を中心に大きな問題となっています。
カスハラの例としては以下のようなものがあります。
- 理不尽なクレームや要求
- 暴言や脅迫
- 長時間の拘束
- 個人的な連絡先の要求
- SNSでの誹謗中傷
従業員を守るための企業の対応ガイドラインの整備や、「お客様は常に正しい」という考え方の見直しが進んでいます。
ハラスメント対策の重要性

ハラスメントは個人の尊厳を傷つけるだけでなく、企業の生産性低下や人材流出、レピュテーションリスクなど、組織にも多大な損害をもたらします。
現代のビジネス環境では、ハラスメントに対する適切な対策は企業の社会的責任であると同時に、持続的成長のための重要な経営課題となっています。
効果的なハラスメント対策としては、以下のような取り組みが挙げられます。
- 明確なハラスメント防止ポリシーの策定と周知
- 管理職を含む全従業員への定期的な研修実施
- 相談窓口や報告制度の整備
- 公正で透明性のある調査・対応プロセスの確立
- トップマネジメントによるコミットメントの表明
ハラスメントのない職場環境は、従業員一人ひとりの成長と組織全体の発展を支える基盤となります。
さいごに

職場におけるハラスメントは多様化・複雑化しており、その予防と対策はますます重要になっています。
重要なのは、ハラスメントは「加害者の意図」ではなく「被害者の受け止め方」が基準になるという点です。
自分では何気ない言動や冗談のつもりでも、相手を傷つけてしまう可能性があることを常に意識しましょう。
健全な職場環境を構築するためには、組織全体での意識改革と継続的な取り組みが不可欠です。
一人ひとりが互いを尊重し、多様性を認め合う文化を育むことが、真の意味での働きやすい職場の実現につながります。
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