ケアハラとは?介護離職を招く職場での新たなハラスメント問題

近年、日本の職場環境において新たなハラスメント問題として「ケアハラ」が注目されています。

仕事と介護の両立に悩む社員が増える中、企業としてこの問題にどう向き合うべきなのでしょうか。

本記事では、ケアハラの定義から実例、防止策まで、ビジネスパーソンが知っておくべき知識を解説します。

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ケアハラとは何か

ケアハラとは、「ケア(介護)ハラスメント」の略称で、従業員が家族の介護を理由に休暇取得や時短勤務などを申請した際に、上司や同僚から受ける嫌がらせや不当な扱いを指します。

介護をしている従業員に対して、心無い言葉をかけたり、仕事を過度に制限したりするなど、職場において不利益な扱いをすることで、精神的な苦痛を与える行為です。

高齢化社会が進む日本では、親や家族の介護と仕事を両立させなければならない「働く介護者」が急増しています。

厚生労働省の調査によれば、企業で働きながら家族の介護を行っている人は約350万人と推計されており、今後もさらに増加傾向にあるとされています。

ケアハラの具体的な事例

職場で実際に起きているケアハラには様々な形があります。よく見られる事例としては以下のようなものがあります。

  • 家族の介護を理由に休暇を申請したところ「仕事より家族を優先するなら辞めたら?」と言われる
  • 介護のための時短勤務を申請したら、重要なプロジェクトから外された
  • 介護休暇の取得後、「周りに迷惑をかけている」と執拗に責められる
  • 介護の状況を詳しく説明するよう強要される
  • 「親の面倒も見られないのか」などと人格を否定するような発言をされる

これらの行為は、当事者の精神的ストレスを増大させるだけでなく、最終的には「介護離職」という選択を余儀なくさせる原因にもなっています。

ケアハラが企業にもたらす影響

ケアハラが放置されることで、企業は貴重な人材を失うリスクに直面します。

介護離職は年間約10万人に上るとも言われ、その経済的損失は計り知れません。

特に、40〜50代の中堅社員層に多く見られるため、企業にとっては経験豊富な人材の流出という深刻な問題となります。

また、ケアハラが横行する職場では、全体的なモラルの低下やチームワークの悪化も懸念されます。

「自分も将来同じ状況になるかもしれない」という不安が職場全体に広がれば、社員のモチベーションや帰属意識の低下にもつながります。

なぜケアハラは起こるのか

ケアハラが発生する背景には、いくつかの要因があります。

介護問題への理解不足

多くの場合、介護経験のない上司や同僚は、介護の実態や負担の大きさを理解していません。

「自分の親の介護くらい自分でやるべき」という価値観や、「介護は一時的なもの」という誤解から、不適切な言動につながることがあります。

業務負担の偏り

介護中の社員が時短勤務や休暇を取ることで、他の社員に業務負担が集中することがあります。

適切な業務調整やサポート体制がなければ、同僚からの不満や反感を招きやすくなります。

成果主義の風潮

「常に100%働ける人」が評価される職場文化では、介護などの事情で働き方に制限がある社員が不当に評価されることがあります。

時間や場所に縛られない柔軟な働き方への理解が浸透していない企業では、特にこの傾向が強くなります。

制度はあっても活用しにくい環境

多くの企業では介護休業制度などが整備されていても、実際に利用しづらい雰囲気があります。

「制度を使うと評価が下がる」という暗黙の了解や、「迷惑をかけたくない」という当事者の遠慮が、問題を複雑にしています。

ケアハラ防止のための企業の取り組み

職場でのケアハラを防止するためには、企業全体での取り組みが不可欠です。

明確なハラスメントポリシーの策定

ケアハラを含む各種ハラスメントを禁止する明確なポリシーを策定し、全社員に周知することが基本です。

具体的な事例を示すことで、「これもハラスメントになる」という認識を広めることができます。

管理職向け研修の実施

特に管理職には、介護と仕事の両立に関する正しい知識と対応方法を学ぶ研修が効果的です。

介護の実態や法的制度、適切なコミュニケーション方法などを理解することで、部下のサポート力が高まります。

介護に関する情報提供と相談窓口の設置

社内で介護に関する情報を定期的に発信し、介護と仕事の両立に悩む社員が気軽に相談できる窓口を設けることも重要です。

専門知識を持った担当者が対応することで、早期の問題解決につながります。

柔軟な働き方の推進

テレワークやフレックスタイム制など、場所や時間に縛られない働き方を推進することで、介護と仕事の両立がしやすい環境を整えることができます。

成果で評価する文化への転換も重要です。

業務分担の見直しとチームでのサポート

特定の社員に業務が集中しないよう、チーム内での業務分担を定期的に見直すことも効果的です。

介護中の社員をチーム全体でサポートする風土づくりが、結果的にチーム力の向上にもつながります。

介護中の社員自身ができること

介護に直面している社員自身も、職場との関係を円滑に保つために心がけるべきことがあります。

まず、抱え込まずに上司や人事部に相談することが大切です。

介護の状況や必要なサポートを具体的に伝えることで、適切な配慮を受けやすくなります。

また、利用可能な社内制度や公的支援を積極的に調べ、活用することも重要です。

ケアマネージャーなど、介護の専門家のサポートを受けることで、介護の負担を軽減できる可能性もあります。

さらに、可能な範囲で職場とのコミュニケーションを維持し、自分の状況を適宜共有することで、チームの理解と協力を得やすくなります。

さいごに

ケアハラは、高齢化社会の日本において今後ますます注目されるハラスメント問題です。

企業にとっては、貴重な人材の流出を防ぎ、多様な働き方を尊重する職場環境を整えることが、長期的な競争力につながります。

ケアハラの防止は、単に法令遵守の問題ではなく、企業文化や価値観に関わる重要な経営課題です。

「介護と仕事の両立」を当たり前のものとして受け入れる職場づくりが、これからの企業には求められています。

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